平綴じ印刷ができるように、PDFの順序を入れ替えたり、空白ページを挿入するプログラムを書いた。 方法1はPython + いろんなコマンドで、方法2はPythonのPDFライブラリであるPyPDF4を利用した方法。 実装してみた結果、後者が圧倒的に簡単だった。

動機

平綴じがしたい場面が出てきたが、印刷機に専用の設定が見つからなかった。 なので平綴じになるようにPDFのページ順を1,2,3,4,5,6,7,8,…から4,1,2,3,8,5,6,7,..に変え、それをプリンタで両面刷り(短辺綴じ)・2ページ割付で印刷することを考えた。

平綴じの場合、紙に両面4ページずつ印刷されることになる。するとPDFのページ数は4の倍数でなくてはならない。よって、4の倍数でなかった場合はその分を空白ページで埋めなければならない。

PDFファイルの準備

テスト用にPDFファイルを作っておく。ここはなんでも良いのだが、とりあえず以下のLaTeXのコードから10ページのPDFファイルを作る。名前はinput.pdfとしておく。

 1
 2
 3
 4
 5
 6
 7
 8
 9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
\documentclass{jsarticle}
\begin{document}
\centering \Huge
1 Page
\newpage
2 Page
\newpage
3 Page
\newpage
4 Page
\newpage
5 Page
\newpage
6 Page
\newpage
7 Page
\newpage
8 Page
\newpage
9 Page
\newpage
10 Page
\end{document}

方法1:Python + 諸々のコマンドの利用

方針

PDFのページ順を変えるためには、pdftkコマンドを利用すれば良い。pdftkは、Homebrewならbrew install pdftk-javaで使えるようになる)。例えば8ページのPDFファイルinput.pdfを並び替えるなら次のコマンドで可能。

$ pdftk A=input.pdf cat A4 A1 A2 A3 A8 A5 A6 A7 output output.pdf

例えば空白ページを1ページ持つファイルをblank.pdfとすると、6ページのPDFファイルを並び替え、7、8ページを空白ページとするコマンドは次のように書ける。A7A8B1に置き換わっていることに注目。

$ pdftk A=input.pdf B=blank.pdf cat A4 A1 A2 A3 B1 A5 A6 B1 output output.pdf

空白ページは次のように作成すればよい(参考)。 convertは、Homebrewならbrew install imagemagickで使えるようになる。

$ convert xc:none -page 842x595 blank.pdf

842x595の部分はPDFのサイズを表すが、このサイズはPDFによって異なるので、input.pdfからページサイズを知る必要がある。これはpdfinfoで可能。pdfinfoは、Homebrewならbrew install popplerで使えるようになる。また、Pagesからページ数を取得できる。

$ pdfinfo input.pdf
...
Pages:          10
...
Page size:      595.28 x 841.89 pts (A4)
...

実際には、A4 A1 A2 A3 ...を手で書くわけには行かないし、input.pdfのページサイズも勝手に取得して欲しいので、この辺りの処理をプログラムに任せることにする。プログラミング言語はなんでも良いが、今回はPythonを選択する。

実装

まずはPDFの情報を取得する関数を作る。Pythonでコマンドを実行するためにsubprocessモジュールを使う。 pdftkコマンドの出力結果はkey: valの形で与えられるので、正規表現でkeyvalを取り出す。 Pagesはそのままintに変換すれば良いが、Page size[float] x [float]の形で書かれているので、それを正規表現で取り出す。

 1
 2
 3
 4
 5
 6
 7
 8
 9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
import subprocess
import re

def get_pdfinfo(path):
    proc = subprocess.Popen(["pdfinfo", path], encoding='utf-8', stdout=subprocess.PIPE)

    p = re.compile('(.+): +(.+)\n')
    info_dict = dict([p.match(line).groups() for line in proc.stdout])

    pages = int(info_dict['Pages'])
    (width, height) = re.match(r'(\d+(?:\.\d+)?) x (\d+(?:\.\d+)?)', info_dict['Page size']).groups()

    class PDFInfo:
        def __init__(self, pages, width, height):
            self.pages = pages
            self.width = width
            self.height = height

    return PDFInfo(pages, width, height)

空白ページを1ページ持つのPDFファイルを作成する関数は次のようにする。

1
2
def create_blank_page(filename, width, height):
    subprocess.run(['convert', 'xc:none', '-page', f'{width}x{height}', filename])

平綴じ用の順序を作る関数を定義する。

1
2
3
4
5
6
7
8
9
def new_page_index(pages):
    page_index = []
    new_pages = (pages + 3) // 4 * 4
    for i in range(0, new_pages):
        if i % 4 == 0:
            page_index.append(i + 4)
        else:
            page_index.append(i)
    return page_index

最後に、実際に入れ替える処理をrearrange_pdf関数としてまとめる。ヘルパー関数として、ページ順序をpdftkの引数用のフォーマットに変換する関数make_cat_argsを作る。

 1
 2
 3
 4
 5
 6
 7
 8
 9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
import os
import tmpfile
import shutil

...

def make_cat_args(pages, page_index):
    cat_args = []
    for i in page_index:
        if i <= pages:
            cat_args.append('A' + str(i))
        else:
            cat_args.append('B1')
    return cat_args


def rearrange_pdf(src, dst):
    tmp_path = tempfile.mkdtemp()
    blank_path = os.path.join(tmp_path, 'blank.pdf')
    print(blank_path)

    info = get_pdfinfo(src)
    create_blank_page(blank_path, info.width, info.height)
    page_index = new_page_index(info.pages)
    cat_args = make_cat_args(info.pages, page_index)

    arg1 = f'A={src}'
    arg2 = f'B={blank_path}'
    subprocess.run(['pdftk', arg1, arg2, 'cat'] + cat_args + ['output', dst])

    shutil.rmtree(tmp_path)

例えば、rearrange_pdf('input.pdf', 'output.pdf')のように用いる。

1
2
if __name__ == '__main__':
    rearrange_pdf('input.pdf', 'output.pdf')

方法2:Python + PyPDF4の利用

実は、以前Python + PyPDF2という組み合わせで、目的のプログラムを書いたことがある。PDFの並び替えも、空白ページを作成する関数もあるので、今回やりたいことはこれだけで事足りる。

調べてみるとそのforkであるPyPDF4があるらしいので、今回はこちらを使ってみる。Web上にドキュメントが見つからないので、pydoc PyPDF4コマンドで読むのが良さそう。また、PyPDF2と基本的なインターフェースは変わっていないと予想されるので、PyPDF2のドキュメントも一部参考になるだろう。

実装

方法1と比べると驚くほどシンプルに書ける。

  • PdfFileReaderでPDF読み込み、PdfFileWriterで書き込みを担う。
  • PdfFileReaderクラスのgetNumPagesメソッドでページ数を取得する。getPageメソッドでページを取得する。
  • PdfFileWriterクラスのaddBlankPageメソッドで空白ページを追加する(ページサイズを引数に指定しなかった場合、1つ前のページサイズと同じになる)。addPageでページを追加する。writeメソッドで書き出しをする。

getPageメソッドに指定するページ番号は0-indexedなので、new_page_indexの実装が方法1と少し異なっていることに注意。

 1
 2
 3
 4
 5
 6
 7
 8
 9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
import PyPDF4

def new_page_index(pages):
    page_index = []
    new_pages = (pages + 3) // 4 * 4
    for i in range(0, new_pages):
        if i % 4 == 0:
            page_index.append(i + 3)
        else:
            page_index.append(i - 1)
    return page_index


def rearrange_pdf(src, dst):
    pdf_src = PyPDF4.PdfFileReader(src)
    num_pages = pdf_src.getNumPages()
    page_index = new_page_index(num_pages)

    pdf_dst = PyPDF4.PdfFileWriter()
    for i in page_index:
        if i < num_pages:
            pdf_dst.addPage(pdf_src.getPage(i))
        else:
            pdf_dst.addBlankPage()

    with open(dst, mode='wb') as f:
        pdf_dst.write(f)